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一般の皆様へ

はじめに

ERGプロジェクトは、衛星観測と地上観測、シミュレーションを密接に連携させて地球周辺の宇宙空間(ジオスペース)を調べる研究プロジェクトです。 ERGプロジェクトの推進には、研究チームとして国内外の約30の大学・研究機関から100名以上の研究者が参加しています。
また、研究チームに加えて、JAXA宇宙科学研究所と名古屋大学の共同運用によるERGサイエンスセンターが設置され、科学データの公開やソフトウェアの開発を行っています。
ここでは、

について、わかりやすくご紹介していきます。

ERGプロジェクトについて

ERGプロジェクトは、「あらせ衛星」、全世界の研究者による「地上観測」や「シミュレーション」との連携によって、ジオスペース(地球周辺の宇宙空間)の解明に挑んでいます。

ERGサイエンスセンター

サイエンスセンターの仕事は、(1)「あらせ」や連携地上観測といったERGプロジェクト全体のデータ製造・アーカイブと解析ツールの開発、(2)データ解析講習会の実施、(3)「あらせ」の観測計画を含むERGプロジェクトにおける共同観測の企画 などを通じて、全世界の研究者へERGプロジェクトのデータを提供しています。

全世界の研究者

地球環境観測データは,広大な自然現象を対象としているため,二度と再現することができない希少な研究資源です。ERGプロジェクトでは、サイエンスセンターがハブとしてインターネットを通じてデータや研究成果を世界中に提供しています。

あらせ衛星

ERG衛星は、放射線帯(ヴァン・アレン帯)と呼ばれる、地球周辺に高エネルギー粒子が大量に存在する領域の変動を"探査"します。近年、放射線帯外帯の高エネルギー電子がどのように生まれるのか、について、宇宙空間に発生するコーラス(小鳥のさえずり)と呼ばれる数kHz帯の電磁波が重要な役割を果たしているのではないか、という最新の研究成果が注目を浴びています。ERG衛星はこの"コーラス"を感じて、"生まれゆく高エネルギー電子"を世界ではじめて捕らえることを目指しています。

オーロラ

北極や南極の空を美しく彩るオーロラは、地球の周りの宇宙空間から高エネルギー粒子が磁力線に沿って高度約100~300kmへ降り込むことで発生します。カーテンのような形が広く知られていますが、その形はゆらゆらと動き明滅を繰り返しており、その動きを細かく調べることで宇宙のプラズマの変化の様子がわかります。

地上観測

ERGプロジェクトでは、あらせ衛星での詳細観測に加え、地上からの遠隔観測とシミュレーションや総合解析とを組み合わせて、放射線帯やオーロラといった現象を総合的に解明します。

JAXA

JAXAでは、あらせ衛星から送られてくるデータを地上局で受信・記録しています。受信・記録された衛星データは、各種補正処理が施され、全世界の研究者の方々に広く提供しています。

宇宙の波や粒子

ERGプロジェクトは「捕らえろ粒子。感じろ電磁波。」をキーメッセージとしています。ERG衛星はこの"コーラス"を感じて、"生まれゆく高エネルギー電子"を世界ではじめて捕らえることを目指しています。 放射線帯(ヴァン・アレン帯)と呼ばれる領域で、高エネルギー電子がどのように生まれるのかについて、宇宙空間に発生するコーラス(小鳥のさえずり)と呼ばれる数kHz帯の電磁波が重要な役割を果たしているのではないかと考えられています。 ERG衛星はこの"コーラス"を感じて、"生まれゆく高エネルギー電子"を世界ではじめて捕らえることを目指しています。

何を研究しているの?

ここでは、わたしたちがERGプロジェクトで挑んでいる「地球磁気圏の謎」について説明します。

ジオスペースとは
ジオスペースとは、人類の活動域となりつつある、地球の影響が強くおよんでいる宇宙空間を意味しています。
人工衛星を用いた地球周辺の宇宙空間の探査と利用は、1960年代から本格的に始まり、現在では、天気予報の気象衛星、カーナビ等のGPS衛星など、宇宙利用はいつの間にか私達の生活にも深くかかわるようになってきました。
一方で、ジオスペースは地球周辺の宇宙空間であるが故に,科学衛星による「その場」での観測が可能な唯一の「宇宙」であるという、科学的に貴重な領域でもあります。
磁気圏とは
宇宙空間というと、「真空でなにもない」というイメージをもつかもしれません。地表近くの大気と比較すれば、地上300kmより上にいくと18桁も密度が低いため、「ほとんど真空」といっても間違いではありません。
太陽からは、「太陽風」というプラズマが常に惑星間空間に流れ出しています。この太陽風は、太陽の磁場を伴って惑星間空間に広がり、ジオスペースを取り囲んでいます。
地球は地磁気と呼ばれる磁気バリアのようなもので、太陽風から守られています。この領域を「磁気圏」とよんでいます。
放射線帯とは
地球磁気圏内には、エネルギーの高い電子やイオンが地球の磁場に捕捉された放射線帯(ヴァン・アレン帯)と呼ばれている領域があります。
これは、1958年にアメリカの宇宙物理学者ヴァン・アレンがアメリカ初の人工衛星「エクスプローラー」で偶然発見した、だれも予想していなかった領域でした。
その後徐々に、放射線帯は磁気嵐に伴って激しく変化していることや高エネルギー粒子によって人工衛星が故障することが知られ、一般社会にとっても宇宙科学にとっても大きな問題となってきました。
クレジット: Courtesy of Windows to the Universe
磁気嵐とは
強い磁気を帯びた太陽風に地球の磁気バリアが何時間もさらされると、ジオスペースで「磁気嵐」が発生します。
磁気嵐では、放射線帯の高エネルギー粒子の数が激しく変動したり、多種多様な電磁波動が発生します。
宇宙天気障害は磁気嵐のときに多く発生しており、太陽の観測やシミュレーションによってどれくらい強い磁気嵐がいつ発生するかを予測する「宇宙天気予報」が急速に必要とされています。

これまでのERGプロジェクトの観測例の一部をご紹介します。

ジオスペースが奏でる音

近年の研究からジオスペースの波が、放射線帯の荷電粒子の分布を変化させる大切な役割を持っていることがわかってきました。
たとえば、1秒周期程度の波(イオンサイクロトロン波動)が生まれると、放射線帯の電子が変調を受けて、地球の大気へと降っていきます。
また、数分周期の波(ULF波動)がジオスペースの中を伝わるにつれて、放射線帯の荷電粒子が地球から遠ざかったり、近づいたりします。
さらに1秒間に数千回以上振動する波(コーラス波動)が強くなると、放射線帯の電子も増えていきます。
このコーラス波動は、可聴域の周波数帯であり、スピーカーで再生すると小鳥の声のように聞こえることから、『宇宙のさえずり』と呼ばれています。
また、雷から生まれた波が宇宙空間に伝わる『宇宙の口笛(雷ホイッスラー)』が観測されることもあります。

当音声データの転載、複製、加工、二次配布等は、自由に行なって頂いて構いません。
商業利用の場合は、事前にERGサイエンスチーム(erg_pwe_info [at] isee.nagoya-u.ac.jp)にご連絡いただき、
©ERGサイエンスチーム と明記したうえでご利用ください。

コーラス:ライジングトーン

1秒以下の短時間に周波数が上昇するパターンが頻繁に繰り返され、小鳥のさえずりのように聞こえます。

観測日時:2018年3月23日 6時29分
地球からの距離:約 37,400 km

観測日時:2018年6月27日 5時2分
地球からの距離:約 31,400 km

観測日時:2018年11月5日 11時19分
地球からの距離:約 31,700 km

コーラス:フォーリングトーン

コーラスのなかには周波数が降下するものもあり、フォーリングトーン・コーラスと呼ばれています。

観測日時:2018年3月21日 6時31分
地球からの距離:約 35,000 km

観測日時:2018年5月13日 11時4分
地球からの距離:約 30,900 km

雷ホイッスラー

上空で発生する雷は、意外にもジオスペースへとエネルギーが伝わっていきます。
このとき、あらせでは滑らかに周波数降下する雷ホイッスラーが受信されます。

観測日時:2017年10月9日 16時37分
地球からの距離:約 10,500 km

観測日時:2018年9月22日 1時17分
地球からの距離:約 13,000 km

観測日時:2018年6月30日 1時44分
地球からの距離:約 7,300 km

これらのデータは、あらせに搭載された3軸のサーチコイル磁界センサーによって取得されました。
プラズマ波動・電場観測器 (Plasma Wave Experiment, PWE)

サイエンスセンターや関連研究者のしごと

ここでは、ERGプロジェクトに関わる研究者や開発担当者の声をお届けする予定です。